KIRARI MACHINOHITO

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【陶芸家】 伊藤 美子(いとう よしこ)

今回は、東近江市猪子町(旧能登川町)にお住まいの陶芸家、伊藤美子さんをご紹介します。

布引焼の陶芸作品を見た時、「こんなにもきれいな色の陶器があるなんて」と、素晴らしさに言葉にならない大きな感動が込み上げてきたそうです。常々、人生を豊かにできる趣味が欲しいと思っていた伊藤さんは、数年前からトールペイントを習われていましたが、写し絵のトールペイントでは自己表現ができないと、物足りなさを感じられてました。偶然にも近くに住む伯母が、布引焼窯元が開催する陶芸教室に通っている事を知り、そこで陶芸を習うようになられました。まさに、運命の出会いですね。週一回の陶芸教室に通い14年、陶芸一筋の伊藤さん。滋賀県内各地で入選や受賞を重ね、今年9月に開催された彦根市美術展覧会では、観客アンケート人気ナンバーワンと、最優秀作品に与えられる市展賞を受賞されました。

 

 

陶器は土をロクロや手ひねり(粘土をひも状に積上げる)で成形しますが、伊藤さんは「ロクロだと既製品の様な感じがして…。形に温もりや味わいが出したい」と、成形に手間隙のかかる手ひねりにこだわられます。今では良さが解って使う釉薬も、「誰でもちょっと習えばできるのでは?」と釉薬で瀬戸物の様にピカピカ光る陶器に、違和感を感じていたそうです。それだけ「自分だけのモノしか意味がない。自分だけのモノを創りたい」と、伊藤さんのオリジナルへのこだわりは人一倍強いのです。元々、細かい作業が好きな伊藤さん、仕上げ技法は線彫りや土の中に色違いの土を埋め込む象嵌に挑戦しますが、立体感を出す事に苦戦されました。「上手く立体感を出す手法はないか」と創作活動と向かい合っている中、かつて学んだ「トールペイントの草花の絵を描いてみては」と思いつかれました。シンプルな素焼き陶器に伊藤さんの好きな、ひっそりと山野に咲く野の花をモチーフに絵を描く。その技法が今や、伊藤さんの代表的な技法となりました。身近な自然の中で野の花のデッサンをして、自分の感性に従って素焼き陶器に絵を落としていく。時には、陶器の内側に全て絵を納めるのではなくて、外にまで絵柄が及ぶ場合もあります。伊藤さんは「絵を陶器の中に納めるんじゃなくて、より自然にデザインしたいから」と話されます。磁器の絵を描いたものは伊万里や九谷、海外にはマイセンやウェッジウッドなど有名な焼き物はありますが、この様に鮮やかな絵付けをした陶器はとても珍しいのです。「シンプルな形に絵を描くから絵が活きます。形にこだわる時は絵は控えますよ」と伊藤さん。オリジナル技法とは別に今も、線彫りや象嵌の技法を使った創作も続けられています。

 

展覧会に出展される際には、作品を抱きしめて「がんばってきいなぁ」と声をかけて、ダンボールに梱包して送り出されるそうです。家事の合間の創作活動ですから、一つの作品を創るのに3週間から一ヶ月かかるのだそうです。こんなに手間がかかるから、子供の様に可愛いのでしょうね。ご自宅には今までの作品すべてが、ダンボールの中に入って保管されています。今でも作品を見ると、創作時の思い出が蘇るそうですから、寝室を占領されているご主人に「何とかせぇ」とぼやかれても、なかなか手放す気にならないそうです。展示会で「売って欲しい」とお声掛けもあるようですが、「二度と同じものが創れないから…」と断られているようです。近々、個展を計画中の伊藤さん。たちまち、ご興味のある方は”フレンドマート能登川店”のボックスギャラリーNO23が伊藤さんの展示スペースですから、一度ご覧下さい。道端にひっそり咲く草花、野山を散策して感じた空気『野の花のように』の創作活動を伊藤さんは続けていかれます。

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