KIRARI MACHINOHITO

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【金属工芸家】木瀬 浩詞(きせ ひろし)

 今回は近江八幡市安土町出身で、石川県金沢市内で創作活動をされている、金属工芸家の木瀬浩詞さんをご紹介します。木瀬さんの幼少時代は初代ファミコンが最盛期の頃でしたから、ゲームで遊ぶことはもちろん、近くの神社や安土山を登っては泥だらけになって夢中で遊ぶ、元気な少年でした。小・中学校での図工や美術の授業での制作は好きでしたが、一人でスケッチに出かけたり、美術館に出向いて鑑賞することはなかったそうです。山奥の自然の中で作品をつくる芸術家のイメージに憧れ、高校に入学した頃からは美術大学を目指したいと考える様になられました。立体造形が好きで高校では美術部に入られましたが、美術大学受験のためにデッサンや色彩など絵画の基本を学ぶために予備校にも通われます。「美術部では好きな立体造形を手掛け、オルゴールのようなハンドルを回すと音の鳴る作品などを作っていましたが、予備校で学ぶ絵画の基本はとても新鮮で、毎日の学びが楽しかったですね」と振り返られます。

大学を選ぶ時は「作品が壊れることがなく、しっかりしたモノづくりができる技術を身に着けたい」という理由で、好きな立体の中から工芸の金工を目指されました。金工の技法には彫金・鋳金・鍛金があります。彫金は金属にタガネを使って彫刻、切削で文様を造形する技法です。多様な彫り方で装飾効果を高めます。また表面の変化をつけるために、別の金属を嵌め込む象ぞう嵌がんも彫金の一種です。鋳金、鋳物は加熱溶解した金属を鋳物型に流し込み目的の形を作る技法です。木瀬さんは銅の鍋を作る課題に取組まれたことで、鍛たん金きんの魅力に取りつかれます。「コツコツとモノを作る鍛金の作業は、打物・手絞り技法とも言われるように、叩けば銅がドンドン変形します。特に手絞り技法は、叩くことで板が薄く伸びるだけではなく、逆に叩くことで板の肉厚を厚くすることもできます。その技法の不思議さが面白かったんです」と木瀬さんは笑われます。金属の性質を活かし、考えた様に金槌や木槌で金属の板を叩けば、延びたり曲げたり模様や表情が現れる様や、壺や皿、花瓶や器物が作られる鍛金の手絞り技法を、いつの間にか木瀬さんは20年も続けておられます。在学中から05年に金沢椀・One大賞展準大賞、 06 年伊丹 国際クラフト展(白雪伊丹諸白 賞)、 08 年第 47 回 日本クラフ ト展(丸ビル賞)、 08 年第 26 回 朝日現代クラフト展(準グラン プリ)、 08 年第 22 回 工芸都市 高岡クラフト展(漆マテリア ル賞)、 10 年第 18 回 テーブル ウェア大賞(大賞・経済産業大 臣賞)と作品展で入賞を重ねら れます。 鍛金の製作工程は、まず完成 イメージをスケッチで描き、そ の完成イメージから逆算して材 料となる銅板から必要な大きさ の形を板取り(切り出す)しま す。その後、平面を立体の作品 へと思いを込めて納得いくまで 叩き続けられます。「イメージ はできているものの、なかなか 思い通りにならないんです。技 法と工程でそれを修正していく ことが鍛金の醍醐味ですかね」 と話されます。鍛金の仕上げは、 銅の上に漆を塗ってコーティン グされます。銅の表面を焼いた り、錆で緑青にしたり、銀粉を 付けたりと、金属の特徴を活か しながら色々な仕上げの表情を 創られます。「色だけではなく 約6年前から、ひび割れ模様に 挑戦しているんです。鍛金は 叩くことばかりですが、 その都度の新しい発見 があってとても楽しい んです」と笑われます。 これからも鍛金の新た な世界を創造されるこ とでしょう。益々のご 活躍をお祈りします。

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