KIRARI MACHINOHITO

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【結び作家】 田中 年子(たなか としこ)

今回は東近江市川合町(旧蒲生町)にお住まいの結び作家、日本結び文化学会副会長の田中年子さんをご紹介します。

茶道のお稽古をしたいと、石州流清水派の橋田正園さんに師事された田中さん。橋田先生は茶道を極めるかたわら、棗(なつめ)や茶入(ちゃいれ)の仕覆(しふく/入れる袋)を縫われておられ、ある時、その謝礼に、『玉のあそび』という昔の本をもらわれました。そこには戦国時代、毒殺を防ぐために鍵の役割をした、約60種類の封印結びの完成図が描かれていました。祭事に使われる飾り結びは、伝統産業や伝統工芸品として京都の組合等で扱われているため伝承されていますが、封印の結びは乱世が収まると伝承されず忘れられます。橋田先生は『玉のあそび』にある封印結びの完成図から手順を解明し、復元することに取組んでおられましたので、田中さんも茶道、華道と共に結びの勉強を始められました。橋田先生は70年頃に、復元できた結びを紹介する『長緒の飾り結び』を出版されました。その本をご縁にお二人は、包結研究家の額田巌さんとお出会いされ、日常的に使える結びがあることや、様々なご教授を受けられました。なかでも、伝統文化が消えて無くならない様にと『日本結び文化学会』(現在会員数214名)を92年に設立されたことは、額田さんのご尽力によるものでした。田中さん自身も結びの指導を始められて33年になります。「お茶、お花、お香には必ず飾り結びがあります。教室で基本をマスターするのに3年、オリジナルが作れるようになるまで10年、共に成長しますから、最初からの生徒さんは自分の応援団みたいな心強い存在です」と話されます。

 

写真の藤の飾り結びをした茶壺。これは、石州流の茶人であった井伊直弼が残した茶壺飾りひな形9種の一つで、田中さんが彦根城博物館の図録写真を見て復元されました。

 

田中さんに飾り結びの魅力をおたずねしますと「仕覆(しふく)の紐は一本で、しかも輪の状態。
45~65㎝の紐で花や昆虫など生命力のあるものや、日常目にするものが何百種類も結びで表現されているんです。これは本当にすごい!!!と思いました。一本の輪の紐から色々な形になるのが不思議で、飾り結びに引込まれていきました」と話されます。

 

ご自分からは情報発信を決してされない田中さんですが、78年に朝日新聞の取材、NHK の『婦人百科』に出演。
主婦の友社から東京で教室開講の依頼を受けるなど、知名度が一気に上がり、今では、東京、大阪、京都、芦屋、静岡、岐阜、滋賀で教室を開講されています。05年には『くらしを楽しむ四季の花結び』を出版、昨年はNHKの『美の壺』にも出演されたんですよ。

 

『日本結び文化学会』の事務局もこなされる多忙な日々の中でも、今では消えてしまった昔の結びの復元に、力を注いでおられます。古い飾り結びを復元されるたびに、結びの順序を図解で残しておられるとか。「これを本にして欲しいと言われているんで、何とか実現しようと思っています。また、消えた飾り結びを復元して、現代風にアレンジして使ってもらえる様な取組みもしています。これからも、飾り結びの文化を残すために、どうすれば若い人に興味を持ってもらえるかと考え、チャレンジしていきたいですね」と力強く話されました。

 

田中さんの作品が見たい皆さんは、東近江市川合町(旧蒲生町)658のご自宅に『ギャラリー花むすび』を開設されています。事前に連絡をしてから、是非ともお運び下さい。

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