KIRARI MACHINOHITO

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【日本画家】 上坂 秀明(こうさか ひであき)

今回は彦根市薩摩町にお住まいの日本画家、上坂秀明さんをご紹介します。

「大学入学後から、本当に絵を描くことが好きになった」と話される上坂さん。子供の頃には絵を描いたり本を読んだり、休日にはお父さんと好きな社寺建築を見ては、建物の木の組み合わせや形、広く奥行きのある大きな襖絵に、感動と魅力を感じていました。「自由帳に描く絵に満足していましたが、上手い人に出会った時、人によってモノの見方や描き方の違いに、改めて絵に興味を持ちました」と話されます。中学生になって建仁寺にある風神雷神の屏風絵を見た時です。「とてもこの絵にかなわない」と画家をあきらめ修復画家を目指すこととなります。修復画家となるにも「美術大学にいかねば」と、入試のためにデッサンを描き続けられます。大学入学後まもなくの教授との面談で「君は絵を描くために入ったんだろ」と言われ、絵を描くその先に修復師としての絵があることに気づかれます。ここから本格的に、日本画を描かれることになったのですが、本物のマネをして絵を描いても、線や絵具の表現などが全く違っているので、作り手が何をしたか解らず、想像したこともない手法が使われていてお手上げ状態でした。そこで日本の古典美術を学ばれることになります。「学び調べていくと、東西と地域が違っても同じ絵の描き方をしているんですよ。身近な材料やモノを使って、身近なモノを描く。絵を描きたい時に描くのは、人間はみんな同じなんだと考える様になったんです。オーストラリア留学の際に見たアボリジニーの絵も同じでした」と話されます。

 

大学院を卒業後、現在まで6年間中学、高校、大学と教師として美術を教えながら、作家として創作活動を続けられています。学生時代に仏像修復師のアルバイトをしたり、古い作品集を見たりと、古い姿や雰囲気が好きですが、特に室町時代の山水画が一番好きだという上坂さん。作家となっての創作活動は、新しいアイディアや方法を考え続ける日々です。その制作と取材には時間がかかりますが、時間を見つけては毎日デッサンを欠かされません。「受験のためのデッサンでは絵にならない」とデッサンをやめられた時期もありましたが、デッサンそのものが絵になる瞬間をとらえる練習になり、デッサンをすると絵の落とし所が見えると、全ての絵の始まりがデッサンにあるとたどり着かれたからなのです。今描かれる絵は、線で陰影を付けるのではなく、面と本来の形を見て筆を面に当てて描かれています。「面を筆で表現するのです。筆の形で面が変わりますから、面に合わせて筆を替えながら描いているんですよ」と上坂さん。

 

3年前にから住まい兼アトリエとして使われている建物は、奥様のおじいさんが住まわれていた近江商人屋敷。たくさんの銘木をふんだんに使われ、職人技が活かされた建物は上坂さんにピッタリです。「古い建物の中で昔の暮らしを想像して、時間や季節を感じられる滋賀の暮らしは好きですね。ここに来てから描く絵も変わってきました」と笑われます。

 

「ずっとシンプルに良い絵を描きたい」その気持ちに尽きるとのこと。まだまだこの地域では美術とのふれあいが少ないので、目と触感で美術を楽しめる図書館を作りたいと考えておられます。「美術館では触れませんが、触り方や古美術のあり方を教えて、好きな作品を選んで、それらから刺激を受けられる場所にしたいんです」と上坂さん。

 

多くの世代間交流をしながら、文化・芸術を理解してもらい、伝承していきたいと夢を語って下さいました。美術がもっと身近なものになればいいですね。ご活躍をお祈りします。

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