ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
それからというもの、筆で書くことが面白くて、字を書き続けられました。ある時、字の脇に絵を描きたいと思って買った紙が水墨画の用紙だったので、そこに一杯の絵(①龍と河童の絵)を描いたら先生に誉められたそうです。
この調子で…と、己書と絵をセットで描くことを習い、手本を真似して字と絵を描かれていたのですが…。「真似から入るのはいいけれど、真似ばかりでは飽きるんです。
しかも見たものを見た目通りに描けないんですから、益々嫌になりました。慣れたら上手くなると言われるけど、慣れたら飽きるんです」と田中さんは笑われます。それからは自分のやり方で、自分が空想した絵を描かれるようになりました。絵を描き始めてから、不思議と自分の好きな絵がドンドン出来てくるようになったので、面白いものだけ描きたいと思い始められます。「字を書いてから絵を描くのではなく、絵を描けば言葉が出てくるのです。私が描いているけど、描いていないというか、こう描こうと計算しなくても力みがとれて、気がついたら絵が描けているって感じ。描けば描くほど元気になるんです」と話されます。絵を描くことが生きること、囚われの心をほぐすこと…。
龍が大空を舞い飛ぶような、のびのびとした絵を描きたいとの思いから、雅号を游龍とされています。「この世は生きることを楽しむところ。笑顔で生きることをつらぬくところ」という賛は、龍の絵を描いている時にふと浮かんだ言葉です。ご自分自身の座右の銘として、心に刻んでおられます。またあるきっかけで知られた、博多の仙厓(仙厓義梵せんがいぎぼん)という江戸時代の禅僧に感銘され、「難しいことを難しく言うのは簡単だけど、難しいことを簡単に伝えるのは難しい。この様な摂理を伝える絵を描きたい」と思われました。2年前に実物の仙厓さんの絵画を見て、更にその思いが強くなられました。「摂理を描くことには興味はあるけれど、難しく考え過ぎると動けなくなるし。やるだけやって自分のやり方を探り、今を精いっぱい生きられるように好きに描いていきます」と目を輝かされます。
神社が大好きな田中さんは年に数回、地元にある太郎坊さんで講師の先生を招いて、気功講習会や古事記塾を開催されています。イベント告知のチラシに描かれる、龍と天狗と太郎坊さんの絵が、マグネットの太郎坊グッズとして太郎坊宮の社務所で販売されています。すごいでしょ。
田中さんの絵を見られた人みんなが、元気になられるといいですね。益々のご活躍が楽しみです。