ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
愛知県におられた頃は中古車の輸出をしたり、電気通信会社の管理者としてケーブルテレビ回線の施工をされておられました。「どうなるかわからないけれど、時流の商売だから地域ナンバーワンを目指してやり続けました。インテリアが好きなもんで、こだわりの家や高級素材を使った家の仕事は、走らずにしっかりと施工していましたから、リピートや紹介のお客様が多くて商売は順調でした。しかし、日々の仕事が目一杯で仕事に追われているばかり。技術の進歩が早く、次々と新しく変るスピードについていけません」と話されます。
結局、新しい技術を取得する時間もつくれず、教えてもらえる場所もわからずで、10年続けてきたこの事業を続けることをあきらめかけていた時でした。仕事のエリア内で、仏像屋のアルバイトをしていた友人と出会われたのです。
まもなく電気通信の仕事をしばらく離れ、アルバイトで三ヶ月間の仏像補修・彩色の仕事に埼玉県の三峰神社に向かわれました。この仏像を前回直したのは江戸時代、金沢から来た職人の仕事でした。
「この仕事は100~200年残る仕事。その意味に大きくひかれました」と話されます。山の中で作業をしながら三ヶ月間、この仕事をやるのか、電気通信の仕事に戻るのか悩まれました。下山後、息の長いやりがいのある仕事として、仏像修復の道に進む決意をされました。林さんは工房の中で「自分に何が出来る」と考え続けられ、工程管理や見積りを見直し、採算性の向上を図るマネージメントに自分の居場所を作られます。それから13年。発注側となる仏具店勤務を経て、仏像復元師として『近江仏像修理工房』を営まれています。
仏像修復は仏壇・仏具店が営業窓口になるのが通常で、そこから依頼されるものを仏像復元師として蘇らせることが林さんの仕事です。薄汚れて色あせたもの、朽ち落ちたもの、壊れたもの、様々な仏像を修理・修復されていますが、元の色を探す作業が重要かつ困難だそうです。また仕上げも清潔感は大事ですが、ピカピカだけではなく、伽藍に調和するようにくすんだ感じや色あせた雰囲気にも仕上げられます。
従業員十数名の仏像修復専門工房で作業の傍らマネージメントもさせていただいたことによって自らの作業経験だけでなく兄弟子や他社様、良いも悪いも数多くみてきました。そういった稀有な経験から、過不足のない修復方法を導きだすことが出来ます。
これは自らのことだけでなくお客様のご予算を有意義なものに換えてゆくことにつながります。
私の仕事は仏像を残すことが最優先ですが、人づてに仕事をしていると、お客様に直接アドバイスが出来ないのが残念ですけどね」と林さんは笑われます。
滋賀県の仏像(文化財に関係なく)は余り手が入れられていないので、より良いアドバイスと提案で誠心誠意の仕事をして、修復や修理を手がけて活きたいと抱負を語られました。