ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
木工作家だけでなく大工で、牧師のスコットさんは日本に住まれて20年、奥さんのご実家である近江八幡市での暮らしは18年になるそうです。「ここへ越してきてすぐに、日本の大工さんのもとで2年間働かせてもらったことが、とても勉強になりました」とスコットさん。日本の職人さんのモノづくりに対するこだわりや情熱、注文されるお客様の想いが実感できたそうです。しかし、家を建てる工事のペースの速さに戸惑いを感じ、家と一緒に依頼された家具づくりに専念しようと考えられました。ただ、大工仕事に比べると注文の波があるそうですが「一人でやってるから繁盛し過ぎても困る」とスコットさんは笑われます。
日本の家は狭い上、50年位前までは水屋戸棚、タンス、ちゃぶ台(折りたたみテーブル)程度の家具の文化が浅いため、家具に対する考え方が随分と違うと言われます。アメリカで生まれ育ったスコットさんはアメリカではキッチンまでオーダー家具として作ります。日本では既製品が多いのは伝統的な習慣、完成品が目の前にあるからデザインや仕上がりに不安がない事、オーダー家具の高いと思い込まれてる事から敬遠されるんでしょうね。しかし、私達が依頼主の顔を思いながら作りますから、作り手と使い手の心が通う良いモノが必ずできます」と話されます。ご自分の作風についてスコットさんは、「クラフト・メイクという感じかな。
木の枝などを自然のままに使って、軽くて使い易いデリケートなものです。ペンキもつかいませんしね」。工房にある数多くの木は、どんな使い方をするかを1~2年かけて考えるそうです。板の取り出して、どう使って欲しいか?何になりたいか?と問い続け、神が降りて来た様にひらめいて制作にかかられます。「木はまだ生きてますから、人の手が入るけど、自然が作るものは神の力が入るんでしょうね。手作りの豊かさ、満足感、達成感を味わって欲しいですね」とスコットさん。人の心が安らぐ様な家具をたくさん作って、手作りの良さが分かる人を増やしたいと、家具づくり精を出せれます。
また、命や人間らしい生活って何かを考え直す機会としてスローライフの本を書きたいとスコットさんは夢を語らます。園芸や農作物づくり、料理や工芸品などの様々な趣味、もの作りは欠かせません。「命の豊かさは心から、心が不満足では、全てが足らないことになりますからね。スローライフは心がゆっくりすることで、働くことの量で図るものではありません。収入より自分の満足を優先した生活をしたいですね」と話されます。
全く異文化の国に住まれ外国人だから見える日本文化・伝統の良さをしっかりと感じ、新しい感性で風土に合った創作活動を続けられるスコットさん。