ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
西村家は真田紐の技術を先代 が京都で習い、東近江市で始め られて100年ほどになります が、今ではお母様の幸さんが日 本で唯一人、真田紐を手機で織っている職人となってしまいま した。「手織りは、機械織りに はないピンと張るようなコシが あるのが魅力です。単織りで半 月ほど、袋織りで1ヵ月ほどの製作期間がかかり、機械織りの紐よりお値段も高くなります が、それでも手織りがいいと注 文を頂けるのが嬉しいですね」と話されます。ちなみに、紐の色や柄などのデザインは全てオリジナル。手機だからこそ、あなただけの真田紐を作ってもらえますよ。工房は手機が3台、成型機、原糸が所狭しと置かれていますが、時がゆっくりと流れている落ち着いた雰囲気です。かつてこの工房では美智子上皇后陛下御婚礼の桐箱の紐や、正倉院の御物の一部として納めた紐が織られました。紀子親王妃殿下の滋賀来訪の際には帯締め作りも任された西村 幸(にしむら こう)さんの手織真田紐は、滋賀の伝統的工芸品の一つとしても登録されています。
小学生の頃から見よう見まねで単織を織っておられてはいましたが、10年前に操さんは「子供の頃から母が織り続けていた姿を見てきたけど、このままでは手織真田紐の伝統は途絶えてしまう。手織真田紐を何とか後 世に残したい」との思いが日に日に強くなり、妹の千鶴さんと 一緒に手織真田紐を継ぐ決心をされました。染色、成型、機織 り、仕上げと全ての工程を一貫した手作業でする仕事は、熟練工でなければなかなか上手く行きません。根気のいる地道な作業の楽しみは、日々の取組みでのに仕上がっていくことだと言われます。
3年前に文化庁からの依頼で、北陸地方の社寺のもので江戸時代に作られた緞帳の修繕の依頼が来ました。「緞帳の端に1寸5分幅のかがり縫いで付けられた真田紐の復元でした。色や形と慎重に織りあげたもので したから、出来上がった時は、今までの苦労が吹き飛んでしまうほどの喜びでした」と操さんは話されます。クールジャパン などと言いながら、本物や良い物を解る人も少なくなった今、伝統を守り受け継ぐ事は並大抵ではありませんね。各市町の博物館や資料館などで展示の機会を得て、日本で唯一の手機織の真田紐が東近江の地で織られていることを皆さんに知ってもらいたいですね。今後は工房見学も実施し、綿と正絹で織ってある本物の風合いや手触りを体験してもらいたいと話されます。是非、工房見学して下さい。