KIRARI MACHINOHITO

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今村 市良(いまむら いちろう)さん

今回は東近江市小池町(旧湖東町)にお住いの、日本画家の今村市良さんをご紹介します。

陶芸家の河井寛次郎氏は「過去が咲いている今、未来のつぼみで一杯な今、今をどう生きるか」との言葉を残しています。1996年、今村さんは過去との決別に向けて『第1回てんびんの里を描く日本画コンクール(旧五個荘町主催)』に未来のつぼみとなる創作作品を出展し、新たな今を踏み出されました。

 

地元に生まれ育ち、自然に親しみ、絵を描くことが好きだった今村さんは、高校の美術部で油絵を学ばれました。その才能を認められた先生の紹介によって、け軸を制作・販売する岐阜の会社に絵師として就職されます。そこは全国から絵の好きな若者が毎年数十人も入社し、京都から招かれる日展作家から日本画を学び、100人程の男女が寮生活をして仕事に打ち込む毎日でした。「日本列島改造論でインフラ整備も進み、大阪万博や沖縄海洋博開催など高度成長期でしたから、新聞広告やチラシから注文が入り、1日に150本の掛け軸が売れるんです。毎日、山水画や風景画を3枚、月に80枚程、作品ではなく商品として描くんですよ。画廊の店主などから、絵を描き続けるなら作家に師事した方がいいとアドバイスもされましたが、その時はこれでいいと思い、独立してからも30年近くの間この仕事をしてきました」と話されます。

 

そして40才を過ぎた今村さんに「今をどう生きるか」の時が来ます。1996年に『蔵』を『第1回てんびんの里を描く日本画コンクール(旧五個荘町主催)』に出展、読売新聞社賞を受賞されます。翌年から五個荘木流町にご縁のある、日展理事で晨鳥社(しんちょうしゃ)【京都の歴史ある日本画塾】会長の日本画家 中路融人(なかじゆうじん)氏が審査委員長となられ、絵師から画家になるチャンスが今村さんに訪れました。創作活動を続けながら数年間、中路先生に師事を仰がれますが、なかなか認めてもらえません。2004年、4回目の出展作『二人』がようやく中路先生の目に留まり、日春展への出展を薦められ、見事初入選をたされました。以来門下生として毎月中路先生のご自宅を訪ね、指導を受ける師弟関係となられました。指導は絵画の描き方に留まらず、あらゆる面からの金言を頂けたようです。2011年に日展に出展した『忘れられし物』が初入選。中路先生の亡くなった2017年以外は毎年、日展に出展され続けています。「中路先生の門人でしかなかったのですが、亡くなられたことを機会に先生のご遺志を継いで、晨鳥社画塾に入塾し塾生として、日展会友として情熱の続く限り日展への出展を続けていきます」と話されました。

 

70才を迎え、一昨年の大きな手術の経験を期に、新たに命をモチーフに樹齢300年を超えるシイの木を描かれた作品『生生』は、2022年第9回日展の特選を受賞されました。本当におめでとうございます。

 

今村さんに今後の活動についてお聞きしました。「今回、湖東図書館にて小学生を対象に日本画に親しんでもらうための、指導を兼ねたワークショップを初めて開催しました。子供たちにとって美術が少し距離があるモノになりつつある今、岩絵具や水干(すいひ)絵具等に触れてもらったり、スケッチをすることで興味を持ってもらえる機会をドンドン提供したいと考えています」と後継者育成尽力への決意を聞かせて頂きました。更に、自分が持てる力を尽くして、人々に感動を与える作品を作りたいと語られました。益々のご活躍をお祈りします。

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