ふるさとに
芸術・文化・伝統・風土を育む
自然素材、特に地場の木を使っての仕事は採算が取れないのが現状。「間伐材を活用した家具や生活用品がPRされているけど、森林組合があれだけ材料をそろえて、仕上げに手間をかけ製作するからには、大量に製品を作らないと合わないんです。それに、山で木を切り倒すだけならまだしも、運び出す手間賃が出ないし…」厳しい現実ですね。しかし、出口さんはこうも話して下さいました。「山にある間伐材は既に成長し過ぎているから、ひとり生えの木を選んで切り出して、皮をむいて材料にします。手間が掛かりますけれど、個人なら経費も余り掛からないし何とかなるんですよ」ちょっと安心ですね。ただ、これでは手作りの木工製品は高価で、容易に私達の手を入るものではありませんね。
出口さんは少しでも多くの人に、柔らか味と温もりのある木工製品を届けたいと、心の底から思っておられます。そのために、使われる材料の大半は廃材。製材所で燃やしていた、ヒノキやヒバなどの無垢板の端材を何かに使えないかと、それらで玩具や家具作りにチャレンジしてみたら、…なかなか良いものができたそうです。「自然素材にこだわって職人が満足できる良い作品を作り始めたら、完成度が高くなって遊びがきかないモノになる。でも廃材で作品を作れば、工夫次第で遊びのあるモノができる」と話され、丈夫で使いやく、簡単に安く作ることにこだわっておられます。元来、ものづくりが好きな出口さん。製作中も手間を減らすことはできないか?手順を変えれば早くできないか?と製作に取り組んでおられます。そして、工房にストックしてある廃材の山を眺めては、機能ははたせても形にならなければ…、どんな形にできるのか?と考え続けることが楽しいとのこと。
今も、小さい端材でも簡単に丸く加工する技を編み出され、タイヤを作ることで玩具のバリエーションを増やされています。
全国各地のイベントに年間10~15回程度参加される出口さん。イベントでは椅子の実演販売で、お客様に台座や脚を選んでもらうオリジナルの椅子を、一日百個も作られたこともあるとか。凄いですね。
小さなモノから大きなモノまで、たくさんの種類の玩具が工房には並んでいます。でも、なぜか全部白木のままなんです。「玩具に色を付けたほうが見栄えがするのでは?」とお尋ねすると、「舐めても良い塗料を塗るくらいなら、白木のほうがイイでしょ」と出口さん。これがポリシーなんですね。今回は『とびはこや』出口さんのオリジナル玩具をプレゼントします。