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【刀剣家】 北川 忠正(きたがわ ただまさ)

今回は東近江市五個荘平阪町にお住まいの、現代刀剣作家の北川正忠さんをご紹介します。 

中学生から映画、特に映像に興味があった北川さんは、芸術大学の写真科に進まれました。しかし、卒業の頃には写真に関わる職業への情熱は失せ、映画に対する熱い心は、青春期の憧れだったと気付かれました。「次は何をする」と考えていると、匠の技を紹介するTV番組で見た、刀鍛冶に興味を持たれたそうです。刀鍛冶について調べると、造り方や様々な流派があること、何よりも「限られた長さや巾のなかで、あれだけ無数の自己表現をしている、仕事の奥深さに魅了された」と言われます。

 

特に魅せられた、鎌倉・南北朝時代に造られた備前刀を目標に、備前伝の隅谷流で長野県無形文化財保持者の宮入法廣さんに師事されました。日本には美濃、山城、大和、相州、備前の五個伝(ごかでん)と言われる、各地の特徴を出した刀の作風があります。江戸時代には、各藩の刀鍛冶が自分好みの作風を造ったため、五個伝の作品は全国各地で造られる様になりました。ですから、長野県でも備前伝の刀が造られているのです。

 

刀鍛冶の弟子の最初の仕事は、掃除と炭切。「炭切3年、向う槌8年、沸かし一生と言って、この三つが大切な仕事なんです。炭切、向う槌は体が覚えるけど、沸かしは火の色を見て鍛錬の時期を見極める仕事だから、頭を使う年季のいる仕事なんです」と話されます。朝7時から夜6時まで、準備と師匠に指示された仕事をし、夕食後は次の過程の練習を10時頃までされます。「次の準備ができてないと、昼間の仕事をさせてもらえませんから」と北川さん。

 

刀鍛冶の登竜門は、文化庁が資格認定する『美術刀剣類制作承認』を受けること。そのためには、最低5年の技術練磨で刀剣類製作者として十分な技術を習得したことを刀匠が証明し、かつ、登録審査委員2名以上の保証人が必要なのです。おまけに、試験に合格し『美術刀剣類制作承認』を取得しても、美術品として価値のある刀を作っている刀剣作家は、全体の一割程度しかおられません。ですから、ここからの師匠のもとでの修業が、刀剣作家となるためには重要なのです。北川さんは振り返られます「この2年間の修行は、まともな刀を造れる刀鍛冶として成長するためには大きかったですね。最初から最後まで一人で造ってみると、疑問や問題点がたくさん出てきます。この時の師匠のアドバイスは、刀剣作家となった今でも信条として大切にしています」と。修業中も日本美術刀剣保存協会が毎年開催する『新作名刀展』に出展し、新人賞や優秀賞を二年連続受賞されました。

 

平成22年、いよいよ現代刀剣作家として独立、今年の5月に火入れ式して『正忠鍛刀場』を開設されました。今年も優秀賞を受賞され、四年連続『近江国正忠作之』の銘の太刀の出来栄えは称えられています。刀剣の制作期間は鍛冶が3ヶ月、研ぎに1ヶ月、ハバキ(さや内に固定する為の金具)に1週間、白鞘(白木のさや)に1週間とか。「買ってもらえるお客さんは、刀剣の価値が判る人と判らない人と半々です。そんなに売れるもんじゃないですが、今は海外の方が需要が多いですね。海外の人は、出来栄えや手間を考えたら、この刀は安いと感じられるのでしょうね」と話されます。北川さんは美術刀剣、太刀、刀、脇差、短刀、お守り刀、居合刀を、依頼主のご要望に合わせて随時制作されています。是非一度、『正忠鍛刀場』を訪ねてみて下さい。

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