KIRARI MACHINOHITO

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【現代美術作家】 田中 真吾(たなか しんご)

今回は大津市伊香立町にアトリエを構えておられる、現代美術作家の田中真吾さんをご紹介します。

 

高校生の時にTV番組で見たピカソの「ゲルニカ」に感動し「人の心を揺り動かす絵が描きたい」と、くすぶっていた絵画への思いを実現するために美術大学に進むことを決意された田中さん。ご両親に思いを告げられ美術部へ転部、更に絵画教室にも通うという、絵描き三昧の日々となりましたが…。絵画教室で本格的に絵を描くことが初めての田中さんと、他の生徒との力量の差は歴然。コンプレックスに陥るほどの悔しさをバネに、デッサンを描き続け、見事に芸術大学に合格されました。

 

大学では洋画を専攻され、芸術の学びが深まれば深まる程、印象派のような具象的な油絵ではなく、抽象的な絵やオブジェ、立体の制作に取組まれるようになりました。
「写真の台頭で写実的な絵画の存在が薄れ、内面的な感情や観念、概念的な気持ちなど、形にならないモノを描くことに、絵画の可能性を求めた抽象画との出会いは衝撃的でした」と当時を振り返られます。何が描いてあるのかと絵画のモチーフを知りたいと思った私は、田中さんに抽象画の見方や楽しみ方を尋ねてみました。「理性的で写実的に描く具象作品に比べ、抽象作品は見る人にとってモチーフや画題が理解しにくいのですが、今までの経験や先入観、作品の知名度や社会的な価値などの情報に左右されずに、子供の頃の様な単純な「好きか嫌いか」の判断基準で見ればいいんですよ」と教えて下さいました。

 

大学三年生の時に開催できた初めての個展では、広島の平和記念公園の人影が残っている階段の話を聞いて「影で何かが伝えられるかもしれない」と新たな技法を取入れ、人体のパーツの焦げ跡を組合わせて桜の木を描いた作品を作られました。「この時初めて火を使うことに挑戦したんです。漆喰についた飴色のコゲ目がきれいでしたが、メッセージ性を強く放つ作品は、私にも見てくださる人にも重苦しい気持ちばかりで、ゲルニカの様な感動を与えているだろうかと腑に落ちませんでした」と話されます。更なる作風を模索して、形を壊して描く、どこまで崩せば良いのか、創造力の可能性を探求し続けられます。

 

「火を使った表現をもっと楽しいものにならないか」と、大学院に進まれた頃から火をテーマに、火を使うスタイルを作風とされていきます。人の生活を支え、ライフスタイルを変え、多くの恩恵を与えてくれた、火と人との歴史や関係は密接です。しかし安全な電気を使うにつれ、直接火を使う機会が減り、火との関係が希薄になった現代だからこそ、田中さんは火をテーマにメッセージを発信されます。「コゲを知らない子供達もいるほどですから、火に馴染みが薄れた人達から見た作品は、どう見えるのか興味があります。同時に、火を使う醍醐味や恐怖心、畏怖の感情など、自分が予想や制御できないモノとどう付き合っていくかを考え、火を扱う技術や技法の継承をする必要を感じています」と話されます。工業高校で化学を学ばれたせいか、色々な素材を使っての化学実験で可能性を探り、上手くいったモノの組合わせで作品を作りあげていかれます。「火を使う作品を通して、社会から火が無くなった時、無くなっていく火について、人と火の関係をメッセージとして発信し続けたい」と力強く思いを伝えられる田中さん。今後益々のご活躍をお祈り致します。

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